私は、現在47歳の女性で自営業をしています。名前は、Mといいます。
北海道に居住していて、札幌までは汽車で30分程度の場所です。
忘れられない恋愛をしたのは、30歳になったばかりの頃でした。
なかなか素敵な男性と出会えない私を心配して、友達が見合いをセッティングしてくれたんです。
相手は40代でバツイチ子持ちの人でした。ちょっと躊躇ったのですが、会うだけ会ってみてと言われて、私は彼に会うことにしました。
相手の名前はDさん。かなり若く離婚をしたらしく、中学生の娘さんがいるとの事。思春期の娘さんがいる男性とうまくいくとは、ちょっと思えなかったんです。もし、自分が娘さんの立場だったら反抗するだろうなと。
待ち合わせは、近くの喫茶店。目印は、作業着という。全然ロマンチックな出会いではありませんでした。
約束の時間に行くと、Dさんらしき人は既に座って待っていました。ブルーの作業着で、ちょっと強面の人でした。
私は、できるだけ背筋を正して好印象に見えるようにしました。
「Dさんですか?」
「あなたがMさん?」
想像していた反応とは違い、私はかなり気後れしました。話す前から断ろうと思ったんです。
席に座り、とりあえずコーヒーを注文すると、Dさんの視線を感じます。ジロジロとなんだか不躾に見つめてくる人で、こんな失礼な人はいないと思ったんです。
「いくつ?」
「30歳です」
「もっと若い人が良かったんだけどな」
独り言のような言葉に、私はカチンときました。年齢で女性を判断するような男性は嫌いだったからです。
「で?いつから来れる?」
「は?」
ここで、流石に変だと思いました。そこで、Dさんになぜここに来たかを聞きました。
「娘の家庭教師を紹介してもらえるって聞いて」
「お見合いじゃなくて?」
私とDさんは、互いにフリーズした状態で見つめ合いました。どうやら、互いに大きな誤解があったようです。
恋愛の相手を探していた私と、娘さんの家庭教師を探していたDさん。どこでどういった誤解が生じたのかはわかりませんが、これで会話がちぐはぐだった理由がわかりました。
私もDさんも大爆笑。一気にその場の空気が和みました。それから、私とDさんはなにかと交流を持つようになりました。娘さんの家庭教師も決まったらしく、Dさんはとても嬉しそうでした。
子供想いの人なのだと、私は感心しました。
Dさんに告白されたのは、交流を持ち始めて1ヶ月たったぐらいの頃でした。
「Mさんには、苦労をかけるかもしれませんが、お付き合いしてくれませんか?」
私は、かなり迷いました。やはり、子持ちの人と交際するという事は、将来は結婚を意識します。30歳という私に、中学生の親が務まるのか不安でした。
Dさんはとても真面目で、タバコも酒もギャンブルもしない人でした。恋愛経験も多くないらしく、デートの時にはとても照れていました。
まずは、娘さんの意見が聞きたいと言いました。すると、意外にも娘さんは大賛成。なんでも、お父さんには恋愛をして欲しいそうです。ですが、私の両親は大反対でした。いきなり中学生の親になるのは私には無理だと言ったのです。
私としても、両親の考えはわかります。でも、1人で苦労をしている彼の事を見ていると、どうにも放っておけなかったのです。
私は、Dさんとの交際を決めました。とはいうものの、やはり大人のデートとはいきませんでした。
子煩悩なDさんは、娘さん中心の生活をしていて、外泊なんてもってのほか。
Dさんとは、キス以上の事はなかなかできませんでした。休みの日に、たまに夕食を一緒に食べるだけ。後は、電話かメールぐらい。現在のようにSNSが発展しているわけではないため、互いの状況を知る事さえできないのです。
正直、不満だけが募っていきました。もっと恋人らしいラブラブな事がしたいです。たまには旅行に行ったり、恋人っぽいイベントも堪能したいです。ですが、子供がいるとそうもいかないのです。
子持ちと交際するリスクを初めて感じました。
そして、些細な事でケンカになった時に、私は言ってはならない事を言ってしまったのです。
「私よりも娘さんが大事なの?」
しまったと思いました。
親ならば、当たり前の事なのです。
怒られると思ったら、Dさんは逆に謝ってくれました。そして、娘も大切だけど私も大切だと言ってれました。
それから、Dさんは2人で過ごせる時間を作ってくれました。やっと恋人同士らしい事ができるようになったのです。
Dさんとは、2年あまり交際しました。やはり、私の親が結婚には大反対で、Dさんが身を引いたのです。
ですが、Dさんとは定期的に連絡を取り合っています。Dさんは、今でも独身です。恋人に戻れないかと今でも思いますが、もしDさんに断られたら、この関係さえ失ってしまうのです。それが怖くて、なかなか告白ができません。
今の距離が私達にはとても合っているように思えるので、これで十分だと考えています。